診療科・部門

麻酔について

麻酔科の方針

手術前、手術中、手術後まで、 患者さまのお体に合わせた 最善・最良の医療を提供いたします。

当院には厚生労働省の認定する麻酔科医標榜医8名が常勤しており、手術中はもちろん、手術前や手術後まで、24時間365日患者さまの安全を確保できる態勢を整えています。さらに当院は日本専門医機構が認定する麻酔科専門医の資格を8名が所持しており(2023年5月現在)、安全な麻酔を行う施設として尾張地区の民間病院で最も早くに麻酔科認定病院の認定を受けました。
患者さまに接する機会の少ない我々麻酔科医ですが、現代の医療においては欠くべからざる存在となっています。「安全な手術」のためには「適切な麻酔」が必要です。しかし適切な麻酔方法や必要な麻酔薬の量は患者さまお一人ずつ異っているため、我々麻酔科医は患者さま毎に最適な麻酔方法を選択し、安全に手術が行える環境を提供しております。また我々は患者さまの安全に少しでも寄与できるよう、最新の医学知識や医療機器の導入を行い、日々研鑽を積み、最高の医療を目指しております。

概略・特徴

患者さまに最も適した方法を選択し、 麻酔管理を行います。

多くの手術では、痛みと大きなストレスを伴い、手術後の回復にも影響を与えることがあります。手術中の痛みを感じなくさせ、ストレスから患者さまの体を守ることが、麻酔の役割です。
当院では、手術前から手術後までの全身管理を麻酔科医が担当しています。手術前日までに麻酔前診察を行い、患者さまに最も適した麻酔方法を選択します。手術中は手術が安全に行えるように患者さまの状態を常に把握し、全身状態を維持しています。
また、手術前後の全身状態を良好に維持・管理するために細心の注意を払っています。

麻酔の種類

いろいろな麻酔を組み合わせ、麻酔管理を行います。

全身麻酔

痛みを認識する脳に麻酔薬を作用させます。

比較的大きな手術に利用します。全身麻酔中は意識が無くなり、手術中の記憶が残りません。また手術中は麻酔薬を持続的に投与していますので途中で麻酔が切れる心配はありません。

区域麻酔

局所麻酔薬で痛みを脳に伝える神経を遮断します。

基本的に意識があります。必要に応じて全身麻酔を併用し、手術中の意識を無くすこともできます。

脊髄くも膜下麻酔

一般的に半身麻酔と呼ばれる麻酔で、主にヘソから下の手術で行います。腰のあたりから針を刺し、麻酔薬を脊髄の近く(くも膜下腔)に入れます。3~6時間効いています。

硬膜外麻酔

首から下の手術で行います。背中から針を刺して細い管(カテーテル)を脊髄の近くの硬膜外腔というところに入れます。このカテーテルから麻酔薬を入れて麻酔します。手術後の痛み止めにも利用します。

末梢神経ブロック

神経の走行に沿って麻酔薬を注射します。短時間の手術や術後の痛み止めに使用します。手術の場所によって、首、脇の下、足、お腹、背中などいろいろなところに注射します。

部分的な局所麻酔

手術をする部位に直接局所麻酔を注射します。

麻酔の安全性と副作用について

近年、新しい麻酔薬や高性能な生体モニター(※1)により、安心して麻酔を実施できるようになりました。しかし100%安全とはいえません。麻酔が原因で死亡される症例は10万人に1人といわれていますが、手術の種類や患者さまの状態によって異なるため、事前に麻酔科医からご説明いたします。

(※1)生体モニターとは
患者さまの状態(血圧や心拍数など)を、継続的にチェックするための装置です。

麻酔後の副作用は、吐き気や嘔吐、頭痛が一般的です。まれに腎臓や肝臓の働きが悪くなることもありますが、多くの場合は一時的に起こる症状で、数日以内に治ります。
術後の鎮痛に使われる麻酔薬の作用で、かゆみや吐き気が出ることがあります。ふわふわする感じ(浮遊感)や眠気を訴える方もいます。
脊髄くも膜下麻酔や末梢神経ブロックの後は、しびれや動きにくさがありますが、麻酔薬の効果が切れてくると、ゆっくりと戻ってきます。

他の病気との関わりについて

手術する原因になった病気以外に何らかの病気がある場合は、麻酔や手術後の状態に影響を及ぼす恐れがあります。麻酔前診察のときにお尋ねしますので、どのようなことでもお知らせください。

麻酔に影響を及ぼす疾患の一部

呼吸器疾患

ぜんそく、肺気腫、慢性呼吸不全、結核の既往、肺の手術の既往、在宅酸素療法を受けている方など

循環器疾患

高血圧、不整脈、狭心症、心筋梗塞の既往、心臓弁膜症、先天性心疾患、ペースメーカーを利用されている方など

脳神経疾患

頭痛、めまい、一時的な意識消失の既往、脳梗塞や脳出血の既往、これらの疾患による後遺症がある方など

代謝疾患

糖尿病、腎臓病、肝臓病、透析をしている方など

その他

リウマチ、膠原病、緑内障、慢性的な貧血、血が止まりにくい方など

生活習慣や常用薬について

ささいなことが麻酔に影響を与える可能性があります。生活習慣や常用薬についても、必ず麻酔科医にお伝えください。以下に表した項目以外にも気になる生活習慣がありましたら、お気軽にお尋ねください。

喫煙

喫煙は、手術後の肺合併症(肺炎など)を増やすばかりでなく、キズの治りも悪くします。手術が決定したら、直ちに禁煙してください。(手術前の禁煙はどの段階でも効果はありますが、できる限り早く禁煙しましょう)

常用薬

手術前に内服している薬が、麻酔や手術中・手術後の状態に影響を及ぼす可能性があります。必ずご報告ください。

飲酒について

「酒飲みは麻酔が効きにくい」ということはありません。どのような方でも必ず麻酔の効果が得られますので、ご安心ください。

合併症について

すべての医療行為に、合併症が起こる可能性があります。麻酔科医は常に合併症が起こらないよう最大限の努力をしていますが、以下のような合併症が起きる可能性があります。また当院は、万が一、麻酔による合併症が生じた場合でも、速やかに対応できる体制を整えています。合併症の症状が出たら、すぐに麻酔科医までご相談ください。

アレルギー反応

非常にまれですが、麻酔薬にアレルギー反応を示す方がいます。その反応の仕方はさまざまで、なかには死に至るほど重篤な「アナフィラキシーショック」を起す方もいます。何らかのアレルギーをお持ちの方は、必ず事前にお知らせください。

挿管の合併症

気管にチューブを通すこと(気管挿管)により、咽頭痛を起こしたり、声がかすれてしまう場合があります。通常は約1週間で治ります。また、歯牙を損傷することもあります。歯周病の方や人工の歯を使用している方は、あらかじめお知らせください。

誤嚥

胃の中に残留物があると、残留物が逆流して肺に入る危険性があります。胃の中の残留物は酸性が強いためこれによって起こる肺炎(誤嚥性肺炎)は重症化しやすく、場合によっては命の危険を伴います。もし胃に残留物がある場合、誤嚥を避けるため、麻酔をかける前に気管挿管を行うことがあります。

悪性高熱

特異体質の方に起きる疾患で、年齢によって異なりますが、およそ全身麻酔1万~4万件に1人起こるといわれています。麻酔薬が原因で体温が異常に上昇し、死に至ることもあります。当院では、悪性高熱の特効薬である「ダントロレン」を常備しています。

脊髄くも膜下麻酔の合併症

ごくまれに、麻酔をする際に用いた針が神経を傷つけ、下半身の一部にしびれや違和感が残ることがありますが、通常は約1週間で治ります。
また、脊髄くも膜下麻酔の後に頭痛が起こることがあります。麻酔後48時間程度で起こることが多いといわれ、ベッドから起き上がると症状が悪化するのが特徴です。安静にしていれば改善することがほとんどですが、なかなか治らないときはスタッフまでお知らせください。

硬膜外麻酔の合併症

ごくまれに、足やお腹、背中などの一部にしびれや違和感が残ることがあります。硬膜外腔に入れたカテーテルが神経を傷つけたのが原因で、通常は1週間で治ります。
その他、硬膜外腔に血のかたまり(血腫)や膿ができると、神経を圧迫し重篤な後遺症が残ることがあるため、足のしびれ、足が動きにくいといった症状に気づいた場合は、すぐにお知らせください。

中心静脈カテーテルの留置と合併症

安全に手術を行うために(特殊な薬剤を用いる、静脈から栄養剤をいれるなど)、首や肩の周辺にある太い静脈に、点滴の管(中心静脈カテーテル)を挿入することがあります。このカテーテルを留置する際に、用いた針が肺にあたり、肺がしぼんでしまう合併症がまれに起こります(気胸)。その場合は、肋骨の間に管を挿入し、肺を膨らませる処置をすることがあります(胸腔ドレナージ)。緊急を要する処置ですので、ご説明を事後に行うことがあります。
また肺の近くにある血管に針が当たり、出血を来すことがあります。ほとんどの場合は自然に治りますが、ごくまれに神経を痛めて、腕や手のしびれを感じたり、喉を圧迫して、息苦しさを感じたりする方がいます。いずれの合併症が発生しても、すぐに適切な対処をいたします。

観血的動脈圧カテーテル留置の合併症

手首や足の甲にある動脈に、細いカテーテルを挿入し、血圧の測定や必要な採血を繰り返し行うことができるようにします。非常にまれながら、カテーテルを挿入している部分に細菌やウイルスが入り込んで感染を起こしたり、血のかたまりが動脈に詰まって、手足の血流が悪くなったりすることがあります。いずれの合併症が発生しても、すぐに適切な対処をいたします。

手術後、お体の具合がすぐれなかったり、合併症の恐れを感じた場合は、早急にお知らせください。

麻酔の手引き

麻酔同意書に署名

手術前日までに、麻酔科医が詳しくご説明します。ご理解いただいたうえで「麻酔同意書」に署名をお願いします。

手術当日の絶飲食

麻酔を受けられる方は、絶飲食をしてください。(絶飲食の時間は手術内容によって異なります。)

病棟で点滴

絶飲食によって不足する水分を補給します。点滴を事前に行うことで、麻酔をスムーズに進めることができます。

手術開始30~45分前に手術室に入室

歩ける方は手術室まで歩いて入室します。

手術台の上に寝る

患者さま確認のため、必ずご自分でお名前を告げてください。その後、心電図や血圧計などを装着します。

麻酔を始める

麻酔科医が安全に麻酔を進めます。

麻酔科医が全身状態を管理

麻酔科医が心電図や血圧計などを常に監視し、患者さまの状態を詳細に把握していきます。必要に応じて、酸素投与、人工呼吸、点滴による水分補充、輸血、昇圧剤(血圧を上げる薬)、抗不整脈剤などの投与を行います。

麻酔を覚ます

一般的に、10~30分で全身麻酔が覚めます。ただし、手術内容、患者さまの身体の状態によって、麻酔を継続したまま集中治療室などで全身管理を行うことがあります。

麻酔の流れ

全身麻酔の流れ

①顔に酸素のマスクを近づけます。医師の指示に従って、深呼吸してください。
②点滴から麻酔薬を投与します。
③意識がなくなったら、人工呼吸を行います。
※口から喉(気管)にチューブを挿入(気管挿管)します。

脊髄くも膜下麻酔の流れ

①手術台の上に乗り、横向きになります。
②腰のあたりから非常に細い針を刺し、くも膜下腔に麻酔薬を投与します。
※脊髄くも膜下麻酔は、脳脊髄液内に麻酔薬を投与します。

全身麻酔を併用される患者さまの場合は、②の後、あお向けになって「全身麻酔」の①~③を行います。

硬膜外麻酔の流れ

①手術台の上に乗り、横向きになります。
②背中から細い針を刺し、カテーテル(細い管)を留置します。
※硬膜外麻酔は、脊髄から膜を隔てて外側にある硬膜外腔にカテーテルを留置します。

全身麻酔を併用される患者さまの場合は、②の後、あお向けになって「全身麻酔」の①~③を行います。

動画

麻酔を受けられる前に再度ご確認ください

手術前

①歯の弱い方、人工の歯(差し歯など)を利用している方は事前にお知らせください。
 上記のような歯は気管チューブを通す(気管挿管)際に損傷しやすいため、ご注意ください。
 事前に、歯科の受診をお願いすることがあります。

②アレルギーなどを持つ患者さまは、事前にお知らせください。
 非常にまれですが、麻酔薬でアレルギーを起こす可能性があります。
 特に今までに何らかのアレルギーを指摘されたことのある方は必ずお知らせください。

③麻酔を受ける方がお子さんの場合、お子さんの体調などをお教えください。
 お子さんへの麻酔は、多くの面で大人と異なります。
 詳しくは麻酔科医からご説明いたします。
 ■このような場合はお知らせください。
 ・風邪をひいているとき
 ・手術当日に発熱などの症状があるとき
 ・3週間以内に予防接種を受けているとき

④妊娠している可能性がある方はお知らせください。
 すべての薬剤に、胎児に影響を及ぼす可能性があります。
 妊娠の可能性がある方は必ずお知らせください。

⑤必ず絶飲食をしてください。
 胃の中に残留物があると、嘔吐したものが喉に詰まり、大変危険です。
 また、嘔吐したものが肺に入って肺炎(誤嚥性肺炎)を起こすと、命にかかわります。

手術後

⑥体調の変化を感じたら、早急に医師または看護師にお知らせください。
 手術の後は体調の変化がおこりやすい時期でもあります。
 いつもとちがう感覚があればいつでもお知らせください。適切に対処します。

関連サイト

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