2025年05月21日
お知らせ放射線科医長・渡邊祐衣医師の論文が「Clinical Lung Cancer」に掲載されました
放射線科医長・渡邊祐衣医師の論文が「Clinical Lung Cancer」に掲載されました。
【掲載誌】
Clinical Lung Cancer
【掲載タイトル】
Combined Impact of Coronary Artery Calcification and Heart Radiation Dose on Overall Survival in Locally Advanced Non-Small Cell Lung Cancer: Who Benefits Most from Reducing Heart Radiation Dose?
(局所進行非小細胞肺癌における冠動脈石灰化と心臓への放射線被曝線量が全生存率に及ぼす複合的影響―心臓線量低減の恩恵を最も受けるのは誰か?)
【概要】
本研究は、手術が難しい進行期の非小細胞肺がん患者140人を対象に、治療用放射線が心臓に当たる線量と、治療前CTで分かる冠動脈の石灰化の有無で3年後の生存率を比べました。その結果、心臓線量が約12Gy以上の人はそうでない人より死亡リスクが4倍高く、複数の冠動脈に石灰化がある人も2.6倍高リスクでした。両方を併せ持つとリスクはさらに増し、とくに“左主幹部”に石灰化がある患者では、心臓線量を12Gy未満に抑えることで生存率が大きく向上しました。
本研究によって、胸部CTで冠動脈石灰化の有無を簡易的にチェックすれば、誰が「心臓を守る照射」の恩恵を最も受けるかを簡単に見極められる可能性が示されました。近年では、強度変調放射線治療(IMRT)などの高精度照射技術が広まり、腫瘍への十分な線量を確保しながら心臓への不要な線量を大幅に抑えられるようになっています。本研究の知見からも、治療計画の段階で心臓線量を意識的に低減することで、特に冠動脈石灰化を伴う患者の生存率向上が期待されることが示唆されました。