2025年05月09日
お知らせ呼吸器内科顧問・岡澤光芝医師の論文が「Viruses」に掲載されました。
呼吸器内科顧問・岡澤光芝医師の論文が、「Viruses」に掲載されました。
【掲載誌】Viruses
【掲載タイトル】
The COVID-19 Infection Did Not Aggravate the Mortality of
Long-Term Care Facility Residents Under Strict Infection Control
and with Immediate Anti-Viral Treatment: Real-World Analysis
【概要】
背景 :長期療養型老人保健施設(LTCF)は、依然としてCOVID-19に対して非常に脆弱である。現在、病原性が比較的低いオミクロン株が感染の主流となっているが、いったんクラスターが発生すると高齢者の死亡率は高いことが知られている。本研究では厳重な感染対策と早期の抗ウイルス治療がクラスター発生時に有効であるかどうか検討した。
方法: 450床のとしわ会老人保健施設において後方視的コホート研究を実施した。厳格な感染対策と早期の抗ウイルス剤使用を実施し、クラスター発生時の生存成績を評価した。2022年1月から2023年12月までに繰り返されたオミクロンのアウトブレイク時の生存転帰をCox回帰分析で評価した。さらに日本においてCOVID-19発生以前の期間(2018-2019年;Period1)、COVID-19が日本に発生しているが当施設には発生していない期間(2020-2021年;Period2)、およびオミクロンによるクラスターが発生したている期間(2022-2023年;Period3)の死亡率を比較した。
結果 :オミクロンによるクラスターが発生した2年間(Period3)で、入所者623人中、253人が感染した。しかし死亡率は感染群で非感染群より低かった(16%対26%)、また、感染は死亡率の増加とは有意に関連していなかった(HR = 1.36; 95% CI:0.91-2.04; p = 0.14)。 層別解析では、感染した女性で死亡率が高いことが示された。Period1-3の比較ではクラスター発生期間(Period3)の方が、Period1, 2より死亡率が低かった。
結論: 厳格な感染制御と早期の抗ウイルス剤使用が行われたLTCFでは、オミクロン感染は死亡率を上昇させなかった。さらに、感染制制御プロトコルの強化はCOVID-19以外の呼吸器感染症による死亡率低下にも効果がある可能性が示唆された。
追:
本研究はCOVID-19感染に関し大雄会より発信された3番目の論文である。1番目の論文は、ワクチン、抗ウイルス薬がないときに国の専門者委員会が行った、COVID-19感染制御と死亡率低減方策を、letter 形式で報告した。重要な点は、感染者が多い集団(pretest probabilityが高い)を中心にPCRなどの検査を重点的に行い、感染者を隔離することが最も重要だという点である。
(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0033350620303073?via%3Dihub)
2番目の論文は、ハイリスク患者において、症状発症又は診断から治療までの時間経過が重症度に及ぼす影響に関して、としわ会外来患者を分析した。発症より治療までの時間に1.5日差があるのみで、肺炎のリスクが上昇することが判明した。
(https://doi.org/10.1016/j.resinv.2023.01.002)
3番目の本研究では老人保健施設という閉鎖空間では、接触者検診が直ちに施行出来(専門者委員会の方策の順守)、直ちに隔離と治療(外来の結果に基づく)が進められると、感染そのものによる超過死亡は発生しないことが示された。またケアワーカーが感染兆候に留意することによりCOVID‐19以外の呼吸器疾患の蔓延を防ぐことができる可能性を示唆した。
(https://doi.org/10.3390/v17050625)