2025年09月29日
お知らせ放射線科医長・渡邊祐衣医師の論文が「The Royal College of Radiologists Open」に掲載されました
放射線科医長・渡邊祐衣医師の論文が「The Royal College of Radiologists Open」に掲載されました。
【掲載誌】
The Royal College of Radiologists Open
【掲載タイトル】
The prognostic effect of coronary artery calcification in locally advanced non-small cell lung cancer: An independent prognostic factor after adjustment for clinical and dosimetric variables
(局所進行非小細胞肺癌における冠動脈石灰化が予後に及ぼす影響:臨床因子や放射線量に関する因子から独立した予後予測因子としての意義)
【概要】
本研究では、放射線治療を受けられた局所進行非小細胞肺がんの患者さん140名を対象に、CT画像から評価できる「心臓の血管(冠動脈)の石灰化」と、治療後の生存率との関係を詳細に解析しました。
その結果、複数の冠動脈に石灰化が見られる患者さんは、年齢やがんの進行度(病期)、心臓や肺に当たる放射線の量を考慮しても、生存率が低い傾向にあることが明らかになりました。これは、冠動脈の石灰化そのものが、他の要因とは独立して治療成績に影響を与える重要な予測因子であることを示しています。
さらに本研究では、①冠動脈の石灰化、②心臓への放射線量、③肺への放射線量という3つの要素を組み合わせて、予後予測のリスクを点数化するシンプルな評価方法(スコアリングモデル)を開発しました。このスコアを用いることで、患者さん一人ひとりの治療後の経過をより正確に予測し、リスクに応じたグループ分けが可能になることを示しました。
今回の成果は、放射線治療を計画する際、がんの状態だけでなく、CT画像から簡単に評価できる冠動脈の状態にも注目することの重要性を示しています。将来的には、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療計画の最適化・個別化や、心臓への副作用を未然に防ぐための対策にも貢献することが期待されます。