2025年07月28日
お知らせ医科学研究所・菊池室長の論文が「Clinical Laboratory」「Medical Mass Spectrometry」に掲載されました
医科学研究所・菊池室長の論文が「Clinical Laboratory」「Medical Mass Spectrometry」に掲載されました。
Clinical Laboratory (2025年71号p. 781-785)
【掲載タイトル】
Development of an Effective Method to Enrich Cell-Free Nucleic Acids in Liquid Samples
【著者】 菊池 有純1, 2, 成瀨 有純1, 野中 健一2, 3, 髙木 公暁4, 森 基希2, 堤内 要2,
【所属】 1 社会医療法人大雄会医科学研究所, 2 中部大学応用生物学部, 3 総合大雄会病院外科, 4 総合大雄会病院泌尿器科
【概要】
リキッドバイオプシーは低侵襲かつ繰り返しの検査が容易に実施できる利点から、近年注目を集めています。
しかし、液状検体に含まれる核酸濃度が低いため、試料によっては多くの検体量が必要となることや、専用の抽出試薬を要する点など課題が存在します。そこで我々は、プロタミン溶液と市販の核酸抽出試薬を組み合わせることで、液状サンプルからセルフリーDNA(cfDNA)を効率的に抽出する方法を開発しました。
本研究では、健常者のEDTA/2K血漿1 mLおよびK562細胞培養上清(5、10、20、40 mL)を使用して検討しました。
試料にプロタミン溶液およびNaClを添加後、インキュベーションと遠心分離を行い、ゲノムDNA(gDNA)を一般的な抽出試薬で精製しました。比較対象として、血漿からはロシュ社製のcfDNA専用調製試薬キットを用いてcfDNAを抽出し、gDNAはリアルタイム定量PCRにて解析しました。
その結果、我々の方法はcfDNA専用キットと同等の抽出効率を示しました。培養上清においては、サンプル量に依存した収量の変動が認められ、濃縮処理を行うことで各容量のサンプルからgDNAの抽出が可能であることが示唆されました。
以上の結果から、本手法はcfDNAの濃縮において、専用試薬を使用せずとも安価な市販の抽出試薬とシームレスに統合でき、大量の液状サンプルの処理にも有効であると考えられました。
【掲載情報】
Clinical Laboratory DOI: 10.7754/Clin.Lab.2024.241023)
Medical Mass Spectrometry (2025年Vol. 9 No. 1 p. 14-22)
【掲載タイトル】
Polyamine-based isolation of extracellular vesicles: Examination in suspension cells and mechanistic considerations
【著者】菊池 有純1, 2, 森 基希, 立花 優里亜, 成瀨 有純, 野中 健一, 髙木 公暁, 加納 圭子, 三城 恵美, 堤内 要
【所属】 1 社会医療法人大雄会医科学研究所, 2 中部大学応用生物学部, 3 総合大雄会病院外科, 4 総合大雄会病院泌尿器科, 5 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所
【概要】
我々はこれまでに、接着細胞の培養上清を液体クロマトグラフィー–タンデム質量分析法により解析し、ポリアミン溶液を用いた細胞外小胞(EV)の新規単離法を報告し、その有効性を多角的に実証しました。本論文では、浮遊細胞株を用いて、接着細胞由来EVとの違いを検討するとともに、EV表面タンパク質の等電点(pI)に着目してEV単離のメカニズムを解明しました。
EVサンプルは、NCI-N87細胞およびK562細胞の培養上清から調製しました。培地は無血清に交換し、48時間培養後に分析を行いました。EVの単離には、ポリアミン沈殿法(PA法)と超遠心法(UC法)を用いて比較検討しました。K562細胞においては、PA法によりEVマーカータンパク質の検出が可能であり、UC法と同様のEV関連カテゴリーが遺伝子オントロジー解析において最上位にランク付けされました。これらの結果は、PA法がK562細胞などの浮遊細胞からもEVを有効に回収できることを示しています。
さらに、回収されたEV中のタンパク質量および表面タンパク質のpI値を比較した結果、PA法ではUC法よりも平均pI値が低くなる傾向が認められました。このことは、EVとポリアミンとの静電的相互作用により、回収が促進されている可能性を示唆されました。
【掲載情報】
Medical Mass Spectrometry DOI:https://doi.org/10.24508/mms.2025.06.004)